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In einem Grad zu einem Aufseher
旅のお伴に

南から西へ抜ける街道は、近年では珍しく安全な路だった。
見通しの良いこの辺りは、ほんの少し前までは賊が出没していたが、余りの被害状況に業をにやした商人のギルドが、私設軍隊を作り、この辺りを中心に街道警備をした。
さすがに効果が出るまではずいぶんとかかったが、今では安全な街道のひとつに数えられた。
無論、後々の事を考え、今でも私設軍隊が目を光らせている。

旅をするには安全だが、仕事がやりにくくなった、とその少年は思う。

見た感じの年齢でいったら、18歳そこそこだろう。
だが、その視線の動かし方が、見た目以上に経験を重ねてる。
動くのに問題ない程度の装備品が、彼の職業を思わせる。
ほっそりとした長い脚を窮屈そうに折り曲げて、街道沿いの大きな岩の上に座って、空を見上げている。

―――なんにせよ警戒心がないってのはいいかもな。
心の中でひとり呟く。

暗くなる前に移動をしてしまいたいが、懐具合いが心元ないのでいいカモを待っているのだが、なかなかこない。
旅人は多数通るが、へたなのに手を出してヘマをする訳にはいかないし、これから向かう街は、宗教都市なのだ。
捕まったら簡単には抜け出せない。
かといって、ゲートパスを持ってないので、賄賂が必要だ。
それを用立て出来ない限りは街へは向かえない。

よってその少年は、カモが通るのをひたすら待っている。


と、しばし後、銀に鈍く光る甲冑に近いような鎧をまとった男が、ひとりで歩いているのがみえた。
少年はその男を一別し、素早くプランを組み立てた。

―――あんだけ重いの着けてたら鈍い。
―――スピード勝負ならこっちが有利だ。
―――何よりのカモが来たな。

口端をくっと上げ、瞬時に立てた計画を実行に移す。



ガシャン、と、その男が歩く度に甲冑のようにまとっている鎧が音をだす。お陰で男との距離間が容易に掴める。
付かず離れずの間合いを保ち、仕事に入る。

「お兄さん、ちょっと俺のお願い聞いてくれる?」

彼は自分の外見が中性的なのを熟知している。
そして、ひとりで旅をしている男の大半は、少年を抱いた経験がある事も知っている。
そして、その経験がある奴の大半は、またの機会をうかがっている事も知っているのだ。

その性癖がある奴らにとって、自分の外見がどれくらい魅力的か、自分の年齢がどれ程魅惑的か、全てを理解している。
その上で、声をかけた。
決して『娼婦』に思われてはならない。
あくまでも“あわよくば”の感情を持たせる程度にとどめなければ。

声に気が付いたか、ふと、彼を見た男の視線の鋭さに、ゾクリとなった。

「俺、ショーンってゆうんだ、あんたは?」
動揺を見せないように、陽気に声をかける。
相手の受け答えによっては、作戦を変えなければならない。
視線に負ける訳にはいかないのだ。

ショーンは、屈託のない笑顔を男に向け、暗に答えをせがむ。
「…ゼル」
低い、下半身直下型の声がショーンの耳に届く。
―――わ、めちゃいい声!

厄介な程に男の色香漂う声色に、多少くらつきながらも、何とか平常心を保つ。
「ね、ゼル。俺足捻ってちょっとだけ歩くの不自由なんた。もうすぐゼリアナの宗教都市だよね?そこまで連れて行ってくれない?」

安全策なら、懐に入る手段に行くのだが、この声はやばい。
近くで聴いたら自分がどうなるか保証が出来ない。
よって“背負われる”方をとった。
確率はそう高くないが、懐に飛込むよりは危険は少ない。

だが、思った以上に男の動きは素早かった。

あっとゆう間にショーンの懐に入り、素早く抱き上げた。
ショーンの膝の下と、肩を支えた“お姫様抱き”。
「ちょっ!!」
声を上げる暇も与えないゼルの動きに、ショーンは面をくらい、心で舌打ちをするしかなかっした。

―――しまった…予想以上に速い。
―――こりゃ、仕事なんて無理だろう。

街に向かって黙々と進んでいるゼルを横目に、自分の見る目が温い事を悟ったショーンだった。

五体満足でありますように…
ただそれだけを信じていない神に祈った。

今の体勢の不自然差には、気が付かない振りを決めこんだ。




ゼリアナの宗教都市。
治安が良く、治めている当主が一筋縄でいかない事でかなり知られている。
そう大きな都市ではない。
産業はこれといってないが、各国を結ぶ主要都市として、多くの商人キャラバンが行き来しているのだ。
それがこの街を発展させた大きな要因だ。加え、先程もいった通り、当主がやり手なのだ。
商いをしやすいように治安を保ち、流通を促進させ、人の出入りを早める。
それらを矛盾のないように、うまくまとめ挙げているのだ。
それを可能にしたのは、傭兵に対して、他国より入りやすくした。

自然、護衛目当てのキャラバンが集まり、ついでに商売を始める。
商人の護衛目当てに、傭兵家業の人材が集まる。そして、その傭兵に護衛許可を発行しているのだ。
無論、力だけではない、その他をみて、国が保証する制度なのだ。
保証を受けたものは、連れを含めて入国審査が簡素化される。

それを目当てに来るのもいるのだ。

【ダブルパス】
それが通称なのだ。
傭兵としての腕も、信頼を置けるとの保証。
それを持っているだけで、ここは当たり前だが、他国でも、職に困らない。
このゲートパスは、それだけの信頼があるのだ。




ゼリアナの入国門の前には、多数の人がひしめいている。
入国審査を行ってるもの、期限切れのパスに必死に弁解してるもの、また、多数のキャラバン隊もいる。
その中を縫うように、ゼルはショーンを抱き上げたまま進んでいる行く。
人々の視線を浴びて、ショーンは居心地の悪さを感じずにはいられなかった。

当然であろう、いくら小柄とはいえ、そこそこの体躯がある男を、見上げる程の男が、軽々ど抱き上げているのだ。
注目を浴びない訳かない。

そんな中で、審査待機してるキャラバン隊のひとりがぽつりと呟いた。

「…ゼルだ………」

途端、周りの奴らの視線を更に集める。

皆が口々にゼルを見上げては感嘆の小さい声を上げる。

―――なに?!こいつ実は超有名??

ショーンひとりが取り残されているようだ。

どうやら、このゼルとゆう男は、キャラバン隊の中ではかなりの有名人のようだ。
それも、殆んどのものが、運がいいと話してるからには、そうとう腕がたつのだろう。

ここで改めて、自分の識別眼のなさに涙がでそうになった。

「すまない、連れが怪我をした、先に通してくれ」

セクシャルな重低音で声をかけられ、門番はチラリとショーンをみやり、「ゼルにも相棒が出来たか」
と意外そうに呟きながら、道を開ける。

入国さえも顔パス。

―――顔パスかよ。

呆れとおかしな緊張で、ショーンの頭はどうにかなりそうだった。

しかし、門番の一言が拍車をかけた。

「当主様がお会いしたいと、お前に言付かっている。顔を出されよ」

ここにきて、ショーンの思考は停止した。
考えても同じ事がグルグルと頭を駆け巡るなら、思考停止してしまった方がいいだろう。
キャラバン隊に知れ渡る程有名で、門番にも顔パスで、当主が会いたがる傭兵。

嘘のようだが、それが今目の前にいる。
自分を抱き挙げている男なのだ。

夢なら覚めて欲しい…




門番に伝えられた言葉のせいか、ゼルは黙って考え込みながら歩き出す。
と、何を思ったか、突然ショーンを下ろし、
「歩けるな」
と、言ったきり、返事も待たずに歩きだした。

その場にぽつんと、置いてけぼりをくらい、固まっているショーンには見向きもしないで、人混みに消えていった。



固まっているゆうに10分で、はっと我にかえり、ショーンはそこで初めて放置された事に気が付いた。

「…って、オイ!!」

既に姿さえ見えないが、取り敢えず消えた方向に向かって思い付く限りの悪態をついてみる。

だが、やはり戻ってくる気配はなく、仕方ないので、取り敢えずは当初の目的の半分は遂行したので、宿を探そうと荷物を取ろうとして、はたと気が付く。

荷物がない。

そして思い出す。

ゼルはショーンが荷物を持つ間も与えない早さでこの街に向かった事を。
つまり、彼の荷物はあそこに放置されたままである事を。

俺の全財産!!

そして俺の商売道具!!!


だが、取りに戻る訳にもいかず、知り合いのいないこの街で、ショーンは途方に暮れるしかなかった。




ブログにちまちま書いたものです。何を思ったかファンタジーです。やや?
篠原はファンタジーは好きですが、自分の好きなものはどうやら世間のBLファンタジーとは全く異質なものと理解しているので、手を出しませんでした。
でも、書きたかったんですよ〜もうやらないよ〜許してよ〜
かなり中途半端ですが、あとは皆様の反応を見て考えようかなぁっと・・・小心者でゴメンナサイ・・・


※少し加筆+誤字修正しました。まだありましたらご報告下さい〜