学校の屋上にこうして腰を落ち着けると、空に吸い込まれそうになる。

高いフェンスも、座る角度によっては視界を塞ぐ事もなく、まるで雲の上に座ってるような錯覚さえ覚える。

駿輔は、この風景が好きだ。空と一体になれるような気分になる、この瞬間が好きだ。

こんな風にゆっくりと空と一体になれるのは、学校がある時は昼休みの満腹な状態のこの瞬間しかない。

つまりは今しかない。

腹が満腹で、人間の三大欲求のひとつが満たされている。

この上なく幸せだ。

腹が満たされたので、眠気が駿輔の思考を奪いかけているが、そう簡単に落ちる訳にはいかない。

何故なら、隣には、親友であり、ちょっとしたきっかけで体の関係一歩手前まで進んでしまった男がいるからだ。

知己…それがその男の名前。

先日、駿輔は売り言葉に買い言葉で、彼女が出来る前に男の味を覚えてしまった。

やっかいな事に気持がよかったのだ。

欲求のひとつが満足されて、またひとつの波がやってきている。

残るひとつは、そう―――性欲。

―――まぁ、男にとってはセックスは主食ってゆうしな。

先日、知己の手によって与えられた快楽。

初めて味わった他人に与えられる快楽に溺れたのは事実。

現に今でも、思い出すだけで体が熱くなる。

ひとりでいても、思い出しては自慰行為に励んだが、自分で与えるものとは比べる事も出来ない絶頂感が、隣で存在

を感じるだけで思い出してしまう。

昼飯をかっ込んで、思考がぼんやりした今、あの思い掛けない快楽の駿怪異を思い出して顔が熱くなる。

「・・・まいったな・・・」

思わず口に出た駿輔の言葉に、横に座ってた知己が手元のコーヒーパックのストローに食いついたままで「あぁ?」と

目だけで駿輔を見る。

「なにがよ?」

突然の言葉の意味を聞いてみた知己だが、隣に座っている、不満気な親友の視線をいただいただけだった。

「なんだよ、俺が原因か?」

駿輔はそんな隣の親友に対して、『なにが気に入らない?』と問い掛けの視線を送ってはいるが、知己も知己で、まるで

駿輔にケンかでも売るかのように、冷めた視線を投げ付ける。

こうゆう時は知己はこんな視線を向けるのは判ってる。

それでも、駿輔はこの視線がとても嫌いなのだ。

この薄い茶色の瞳が自分に与える影響がっかなり大きいのだ。

心の奥の奥まで見られているようなこの瞳の色で見詰められると、息を飲むような緊張感で、体が動かなくなるのだ。

知己はそれが判ってて、わざとそうする。

「・・・・・・ンな目で見ンな・・・つぅの・・・」

知己は目を反らせないまま、訴えてみる駿輔を見るのが好きなのだ。

俯き加減で子犬の様に見上げる瞳が、知己の中のオスを刺激する。

―――こいつは気が付いてないが・・・

これが、駿輔の苦手な視線を向ける理由。

そして、ゾクゾクと背中を駆け上がる優越感が堪らない。

だが、いつもと何かが違う。

駿輔の態度が?それとも自分自身の視線が?

だが、それはすぐに理由はわかった。

知己をみる駿輔の視線が艶っぽさを含んでいる。

この前の味わった快楽が駿輔の中で燻っているのか?

「お前の目・・・今日・・・なんかやらしい・・・・・・」

潤んだ目が知己を瞳に映す。

その媚態が更に知己のオスを更に刺激する。

ゴクリと喉が鳴る。

男らしい喉仏がグリグリと上下する。

―――昼休みはもうすぐ終わる・・・この次の授業は・・・

瞬時に二人揃ってサボる事が出来ると計算し、快楽に飢えている駿輔を瞳で誘う。

「お前がやらしい目で俺を誘ってるんだろ?」

「誘って・・・ないって・・・」

目が離せないまま、吐息さえも感じる距離に知己の顔がある。

唇が駿輔を求めて、いやらしく濡れている。

それを見ただけで、駿輔の中心は首を擡げ始めて、ふるり、と震える。

―――また、アレが?

自分の中で駄目だ、と止める感情と、早くと急かす感情がぶつかり合い、軽い眩暈を感じたが、駿輔はただ、じっとそ

の瞬間を待っている。

体が、動かないのだ。

ゆっくりと触れる唇の温い感覚にゾクリと背中を振るわせる。

初めて触れた他人の唇。

それは思った以上に心地よく、駿輔の思考を奪うには十分過ぎるものだった。

吸い付くようにゆっくりと愛撫される。

駿輔の唇を、己の唇で甘噛みし、ゆっくりと快楽の波に連れて行く。



遠くで、午後の授業を知らせるチャイムが鳴った。

だが、ふたりはその行為を止める事が出来なかった。








歯を割って進入する知己の舌が、駿輔の息を吸い尽くすように蠢く。

はぁ、と時折洩れる駿輔の吐息を舌先に感じながら、知己も夢中になって駿輔の口中を攻める。

ぴちゃり、と互いの唾液が交じり合う音が、駿輔の中心を徐々に追い詰めていく。

決して触れられる事のないそこは、燃えるように熱く、先から涙を滴らせ、知己の与える快楽に溺れている。

「・・・んハァ・・・」

子犬の鳴き声のような甘い声が鼻から洩れるのを感じる度に、知己のオスは刺激され、行為を激しくしていく。

男に対してこんなにも浴場出来るものなんだ・・・

今まで、女しか相手にした事がなかった。とゆうより、一般の男性と同じように、女性にだけ性欲が向かったが、今回は

違う。今まで抱いてきた数々の女とは比べ物にならない程に内から性欲が湧いてくる。

今までの誰よりも欲望が駿輔を欲してる。

「・・・はぁ…あッ」

キスだけでこんなにも感じている駿輔の舌を追い立てるように吸い付き、纏わりつく。

駿輔の鼻から洩れる吐息に急かされ、知己は自然と駿輔の熱くなっているペニスを制服の上から撫で回す。

ピクリ、と反応し、鼻から『フン・・・』と鳴き声を漏らす。

「なんつぅかわいい声で鳴くな?」

キスの合間にズボンの上から駿輔のペニスをいたぶる。

つぅ・・・と竿を撫でてみたり、先の辺りを軽くつまんでみたり。

その度に、体が跳ね、喉の奥から甘い声が洩れる。

すっかり固くなっているペニスが、知己の手に感じる程にビクビクと動く。

駿輔の唇から離れ、顎、頬、耳と舐め上げながら、熱い声で囁く。

「もっと気持ちよくして欲しいんだろ?・・・自分で下・・・脱げよ」

小さく跳ね、おそるおそる自分の制服に手をかける。

・・・が。

「・・・こ、こんなトコでヤんのかよ・・・」

さすがに学校で、屋上の誰かに聞かれるかも判らない処でイケナイ事するのはイヤらしい。

「・・・じゃ、お前のウチ・・・行く?」

「・・・」

少し考えて、駿輔は小さく頷いた。

知己は軽くキスをして、駿輔に手を貸し、立ち上がらせた。



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Quelque chose est toujours different
いつもと何か違う